新興国として注目されている東南アジアですが、その中でも成長市場と言われているのがカンボジア市場です。
まだまだカンボジア株式市場は発展途上ですし、確かに2019年は大きな伸びを見せましたが、だからといって安易に投資してはいけません。
カンボジアが現在どのような状況にあるのか、なぜ投資してはいけないのかくわしく解説していきます。
他の新興国については別記事でも解説していますので良ければ参考にしてみて下さい。
関連記事
『ミャンマー株式市場は儲かるのか?超新興国投資を解説する!』
カンボジアってどんな国?
カンボジアの基本情報
まずはカンボジアがどんな国なのか確認していきましょう。
国名 | カンボジア王国 |
首都 | プノンペン |
面積 | 18万1035平方キロメートル |
人口 | 1607万人 |
宗教 | 仏教(97.9%)、イスラム教(1.1%)、キリスト教(0.5%)など |
公用語 | クメール語 |
実質GDP成長率(2018年) | 7.25% |
名目GDP | 245億ドル |
1人当たり名目GDP | 1509ドル |
名目GDPでいうとフィリピンの1/10にも及びません。ただし、カンボジアの場合は人口が少ないので1人当たり名目GDPで比較してみましょう。
それでもフィリピンの1人当たり名目GDPは3104ドルですので、カンボジアは約半分であることが分かります。その代わり実質GDP成長率は7.25%と非常に高い数字となっています。
つまり、カンボジアの経済はまだ決して大きくありません。これからの成長が期待される国なのです。
アンコールワットで有名なカンボジア
日本でカンボジアのイメージと言えば「アンコールワット」ではないでしょうか。
アンコールワットはカンボジアのシェムリアップにある寺院です。クメール建築の傑作とされカンボジアの国旗にも描かれています。
観光地としてはおすすめですので興味があれば足を運んでみて下さい。雄大な自然と遺跡群の風景が楽しめますよ!
余談ですが、アンコールワットから40kmほどのところに「ベンメリア」という遺跡があるのですが、こちらはあの「天空の城ラピュタ」のモデルになったと言われています。
本当に手付かずの遺跡という雰囲気を楽しめるので時間があればぜひこちらにも立ち寄ってみて下さい。
カンボジアの悲しい歴史
続いて、カンボジアの歴史についても見てみましょう。実はカンボジアには悲しい歴史があります。
1975年~1979年のポルポト政権下で歴史上もっともひどいと言われる大虐殺が行われたのです。その犠牲者はなんと200万人に上ると言われ、当時のカンボジア人口の1/4が犠牲となっています。
ポルポトの目指す世界は極端な共産体制であり、資本主義とは全く異なるものでした。
お金はいらない、大学や教師もいらない、自由に恋愛をしてもいけない、田舎が革命の中心であるべきだ
理想の姿は農民とされ、必要なものは国が全て用意する。そういう社会を目指したのです。
そのため、医師や教師などの知識人階級、資産をもつ富裕層がとくにポルポト政権下での犠牲となりました。外国語を話してもいけないし、メガネをかけているだけで虐殺されたというから驚きです。
そのときに本来であれば経済を引っ張っていくはずの知識人階級が虐殺されてしまったため、カンボジアの経済発展は遅れてしまったのです。
それでは、近年のカンボジア経済はどうなっているか見ていきましょう。
カンボジアの経済成長
(出典:世界経済のネタ帳)
カンボジアのGDPは順調に右肩上がりとなっています。ここ5年間の経済成長率も平均7%以上と安定して成長し続けています。
カンボジアがこれだけの高成長を実現できているのは、その人口構成に理由があります。
先程ふれた1970年代の大虐殺によって人口が絞られたあと、急激に増加しました。国としても度重なる内戦を乗り越えて現在のカンボジアが誕生したのは1993年です。
国としても若いですし、国民も平均年齢が25歳と非常に若いのです。
(出典:世界の人口ピラミッド)
カンボジアの産業では若い労働力をいかした縫製業がさかんです。日本や欧米のアパレル企業が進出し工場を作っています。日本で手に取った衣服がカンボジア製だった経験は一度や二度でないでしょう。
さらに、さきほどご紹介したアンコールワットのように観光資源も豊富です。中国人旅行者の増加によりカンボジアの観光業も順調に伸びています。
これからのカンボジア経済は発展していくことが期待されているのです。
好調なカンボジア株式市場
(出典:カンボジア証券取引所)
続いてカンボジアの株式市場はどうでしょうか。2018年1月から2019年12月までで約2.3倍に成長してることがわかります。
カンボジアは経済だけでなく株式市場も順調に成長しているのです。
経済も発展しているし、株式市場も成長している、一見するとカンボジアは絶好の投資先のように思えます。ですが、それでも投資してはいけないのです。
その3つの理由を解説します。
カンボジアに投資してはいけない3つの理由とは
理由①5社しか上場してない
好調に推移しているカンボジアの株式市場ですが、実は上場企業が5社しかありません。
日本の株式市場には3500社程度が上場していることを考えると圧倒的に少ないのです。
ハッキリ言ってしまえばカンボジアの株式市場はまだまだ未整備で投資環境が整っているとは言えません。2019年は確かに好調に推移しましたが、何かのきっかけで暴落してしまうことも考えられるのです。
新興国投資においても最低限の成熟度は必要です。カンボジアは投資するには早すぎる国となっています。
理由②売買代金が少ない
二つ目の投資してはいけない理由は、売買代金が少ないことです。先ほどの株式市場の推移でみたグラフの売買代金に注目してみましょう。
(出典:カンボジア証券取引所)
グラフを見ると分かるように圧倒的に株式の売買がないことが分かります。つまりカンボジアの株式を利用している人がまだまだ圧倒的に少ないのです。
こういった状況では売りたいときに株を売れず暴落時に損切りできない可能性が高いです。カンボジアの株式投資には大きなリスクが伴うのです。
理由③カントリーリスクが高すぎる
カンボジアは民主主義の国ですが、与党一党体制となっており事実上の独裁体制となっています。
旧野党の元党員らに対しては尋問が行われ亡命を余儀なくされている人も数多くいます。
現在の与党を支えているのは中国で、カンボジアへの海外直接投資の内、3/4が中国マネーだとも言われています。中国マネーの恩恵を受けているのは主に富裕層で、国民の不満が高まれば最悪クーデターの可能性もあります。
事実上独裁体制の国の株式に投資するというのはあまりにハイリスクです。カンボジアはカントリーリスクが高すぎる国だと言えるでしょう。